夢の濁流

80000HIT キリ番作品









私はよく夢を見ます。

夢の中で、私は誰かをさがしています。

確かにその名も呼んでいるのに、その人からの返事はありません。

いえ、もしかしたらその人も答えてくれているのかもしれないのだけど、私の前には水とも光とも判別つかない流れが横たわっていて、その流れの音に遮られて聞こえないのです。

濁流。

そう名付けてもいいようなその流れは、ごぅごぅと音をたてて流れていて。

私などちっぽけな存在だと知らしめているようです。






その流れは、遠い山から流れてきます。

遙か遠くに見えるその山脈はずっしりとした存在感を醸し出していて―――優しく私を見守ってくれています。

だけど。

あの山までも私の声は届かないのです。

だからせめて、虚空へと届けと私は声を張り上げます。

あなたへと届くように。

あなたのいるあの空に響くように。


私の空と、あなたの空は決して繋がってはいないけれど、この場所でならばきっと繋がっている。

そう信じて。









今日も夢を見ました。

目覚めれば忘れてしまう夢だけれど、この夢の中でしかあなたの事を思い出せない私にとっては、この夢は大切なひとときです。

やはり今日もあなたに会えません。

あなたの声を聞く事も出来ません。

ただただ私の前には、ごうごうと流れる濁流があるのみ。









ふと私は気がつきました。

もしかしたら、この濁流をさかのぼっていけば、あなたに会えるかもしれない。

あなたが来るのをずっと待つのではなく、私からあなたに会いに行けばいいのではないかと。

そうすればいつかきっと会えるでしょう。

早く会いたい。

あなたの声を聞きたい。

夢の中だけでなく、現実ででもあなたを思い出したい。

夢の中で会えれば、きっと私はあなたを思い出せる。





その私の想いが通じたのでしょうか。

目の前を流れる川に、キラキラと光る舟が現れました。

この舟に乗っていけば、きっとあなたのところへとたどり着ける。

そう信じて、私はその舟に乗り込みました。


逆流に逆らって進むのは容易な事ではありません。

でも、これしか方法がないのです。

あなたに会う為には、もうこれしか方法はない。

だから、私は進み続けます。

あなたに会う為に。

あなたを思い出す為に。




だから待っていて、ハク。


私、絶対にあなたを思い出すから。






END


80000キリ番作品です。色々考えてみて、この作品は千尋の独白という形にした方がいいかなと思いやってみました。例によって谷山浩子さんの曲「夢の逆流」からです。そのまんまのタイトルではまずいかと変えてみましたが早後悔中。でも変えずにさらし者にする私です(爆)。実験的意味合いがこゆい作品となりました‥‥(^^; ちょっと純文学を意識してみましたがどうでしょう‥‥。




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