どっちが勝つでショウ

28000HIT キリ番作品





「きゃ〜〜〜〜!!」

という悲鳴をドップラー現象つきで響かせながら去っていくのは何を隠そう(隠してないが)千尋。

それをおねえさま達は見送って「毎日毎日飽きないよねぇあの二人」と感想を述べ合った。



ハクと千尋のおいかけっこは、すでに油屋の名物となりつつあった。

客の中にはそれが見たくてくる者もいたりして。

はじめは「仕事中にうるさい!!」と怒鳴っていた湯婆婆も、客からの要望となれば黙認する。


という訳で、千尋の勝ち目はますます薄くなっていくのであった。






「はぁ、はぁ、はぁ‥‥」

柱の影で一休み。

どうせすぐ見つかるだろうと思いつつも、息を整えないととても走っていられない。

「‥‥今日はどこに逃げよう」

この前はリンのところに逃げようとして階段のところで捕まって、そのままハクの部屋に強制連行された。

その前は倉庫の中で荷物と化して難を逃れようとしたのだが、無茶苦茶機嫌が悪くなったハクの剣幕に皆おそれをなして、密告されてしまった。

思いっきり不利なこの状態で、千尋を受け入れてくれるのはリンと釜爺くらいしかいない。

「今日は釜爺のところかな‥‥」

少し息が整ったのを確認して、千尋は再び走り出そうと足を踏み出した。

そして。


ぱふっ。

とやわらかいものにぶつかって、反射的に「ごめんなさいっ」と頭を下げて謝った。

そして。

「別に、謝る必要はないよ」

という声に――――――さぁぁぁぁっ‥と青ざめて顔をあげる。


ハクが立っていた。



「きゃ―――――――っっっっっ」

という悲鳴つきで連行されていく千尋をおねえさま達や蛙男たちが見送る。

「今日もハク様の勝ちか‥‥」

「千が出し抜ける事は万が一にもないだろうな‥‥」

「いや、何度か出し抜いた事はあったぞ? ほれ、ハク様が湯婆婆様に呼び出されたりとかした時に‥」

「しかしそれは千の実力ではなかろう」

「不可抗力も運のうちじゃ」


そんな事をひそひそと話し合う皆の後ろに立つ人影。

「じゃあ、明日はどうなると思う?」

そう言い出したのは、リンだった。










次の日。

仕事が終わり、すでに逃げの体勢に入っている千尋は、キョロキョロと湯殿から顔を出してあたりをうかがった。

「‥‥いない」

そういえば今日は一度も姿を見かけなかった。

ちゃーんす。

このまま女部屋まで走って帰って、布団の中に入って眠っちゃおう。

ささささっ‥とネズミのごとくさかさか走って階段を上っていく。

そして、この階段を上りきったら、女部屋に到着。

というところで千尋はようやく息をついた。

「ここまでくれば大丈夫よね‥‥」

ふ、と窓の外を見る。

そして、千尋はまっしろになった。




竜がいる。

白い竜。

でもその体から感じられるオーラはどす黒い。







「竜になるなんて反則よ――――――――――っっっっ!!!!」


再び廊下を走っていく千尋の後を白い竜が追っかける。

その様子を見ていたリンは、ちっと舌打ちした。

「‥‥今日は、無理か??」






おっかけっこもいつまで続くか―――――そう思った時。

「ハク!!!!」

湯婆婆の声が響き渡った。

「おまえ、仕事の報告もせずに何遊んでるんだい!! すぐに報告に来いっていっといたろ!!!」

さすがのハクも、ここで働いている以上は湯婆婆に逆らう事は出来ない。

しぶしぶながら、最上階にある湯婆婆の部屋へと向かう。

それを見送って、千尋はその場に座り込んでしまった。

「た、たすかったぁ‥‥」

ぜぃぜぃと息をつく千尋のその向こう側で――――――




「やったぁぁぁぁ!!!」

「ちぇっ、リンの一人勝ちかぁぁぁ!?」

「はいはいっ、ちゃんと出せよぉ?」


いきなりの騒ぎに千尋ははっと視線を向けた。

廊下のど真ん中で、従業員たちが騒いでいる。

その中心にいるリンが、千尋の視線に気がついて近づいて来た。

「千、サンキュっ!! すっげぇ稼がせて貰ったぜ。御礼に何かおごってやるよ!!」

「‥‥は?」

「くぅぅぅ、ハク様が今日も千を連れて行くと思ったんだが‥‥」

「湯婆婆様が出てくるとはのぅ‥‥」

そんな事を愚痴りながら去っていく蛙男たちを呆然と見送る。

やがて。

千尋はようやく気がついた。

自分とハクをネタに、彼らが賭博をしていた事に。

「千、何が食いたい? 饅頭でも団子でも、何でも食わせてやるぜ?」

上機嫌のリンは、千尋の肩がふるふると震えている事に気がついて、そっとのぞき込んできた。

「‥‥千?」




「‥‥‥ら」

「は?」

「あんたら、あたしをネタに何やってんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

いきなり逆キレした千尋に、リンがげっと後ずさる。

「セ、千? 落ち着け‥‥‥」

「黙って聞いてりゃ、ヒトをなんだと思ってるんだあんたらは――――――――――――!!!!」

「わーっ!! 落ち着け、千――――――!!!!」









結局。

リンの稼ぎは全て千尋にぶんどられ、闇に消えた。

何に使われたかは、千尋のあまりの剣幕に誰も聞く事が出来ずじまい。

そして、油屋内での賭博はいっさい全て禁止されたのであった。



END

28000キリ番作品です。ブラックハクと千尋のおっかけっこをネタに賭博‥‥‥というリクでしたが、あんまり物語をふくらませられませんでした(^^; さて、千尋がリンから取り上げたお金は一体何に使われたのでしょう?
1.貯金 2.全部自分のために使った 3.銭婆にあげた 4.坊にお小遣いあげた 5.その他




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