力ある者
その15

Web拍手御礼作品









「結局ばたばたしてじっくりと話す暇なかったね……」

ハウルの城と繋がった扉の前に立ち、千尋はしょんぼりとした様子で呟いた。

「でもこうやって繋がったのが分かったんだし、何時だって会えるよ」

ハウルが慰めるように言うとようやく千尋は「うん」と頷いて笑みを見せた。

「今度は私の家に遊びに来て。ね?」

「ええ。楽しみにしてるね」

何時までも話をやめようとしない千尋にハクは苦笑を漏らした。

「ほら、そろそろ帰らせてあげないと、私達も仕事の時間になるよ」

少しずつ日が傾き始めている。

もう少しで湯屋に明かりが入るだろう。

「僕らも帰らなきゃ。まるまる数日いなかった事になるから、マルクル達が心配してるよ」

「そうね」

扉を開ける――――その向こうには、ハウル達にとっては見慣れた、懐かしい動く城の壁があった。

「……それじゃ、またね」

扉の向こうへと渡り、ソフィーが振り返る。

「うん、また」

ばいばい、と軽く手を振って、ソフィーは扉を閉める。

それを千尋はじっと見つめていた。




「……やっぱり…」

たった今、ソフィー達が帰っていった扉をそおっと開けると。

そこには先ほどまであった筈の城の壁は見えず、何もいない豚舎の薄汚れた壁が見えるだけだった。

「接点が切れたんだ」

「……今度は何時会えるんだろ」

後ろから見ているハクからはっきりと分かるほど、千尋は肩を落としてしょんぼりと項垂れた。

「1度あることは2度あるって言うだろう? 3度目もあるよ、必ず」

何故か自信ありげなハクを千尋は振り返った。

「何で断言出来るの?」

ハクは「さぁね」と微笑みを浮かべ、千尋を抱き寄せた。





一方。

「何してたんだよ――――!!! すぐに帰ってくる、みたいな事言ってまたふらっといなくなって!!」

帰って来たハウルとソフィーを出迎えたのは、カルシファーの怒鳴り声だった。

「ご、ごめんなさい……色々あったのよ」

「いっつもおいらは留守番だ!! ちぇ!」

どうやら自分が置いてけぼりを食らった形になったのが気にくわないらしく、カルシファーはいつもよりも顔を赤くしてぼうぼうと燃えさかっている。

「その代わり土産話は色々あるから、ね? 機嫌なおして」

ソフィーが言うとそれまでぷりぷり怒っていた筈のカルシファーはころっと顔をほころばせた。

「ま、それならいいか。2度目はないからな!」

ほっと胸をなで下ろすソフィーを横目に見ながら、ハウルが口を開く。

「今度はカルシファーも連れてってやるから」

「今度?」

扉を閉じた後、あの世界との接点が切れてしまった事はソフィーも確認していた。

「今度……って?」

不思議そうなソフィーを見て、ハウルの機嫌は頂点に達したようだった。

「今度は今度、だよ。楽しみにしておいで」

「……??」

上機嫌なハウルを、ソフィーとカルシファーは首を傾げて見つめるばかりだった。







千尋とソフィーがその理由を知るのは、また後の話。








END


長くなりましたがこれにてこの話は終わりです。前はコラボについて延々延々語りましたが今回はそれを語る事もないので簡単に。
前回がハウル達の世界に千尋達がいったので、今度は逆という安直な考えから生まれた話ですが何とかまとまったのではないかと思います。
後行ってないのは千尋の住む世界ですね。ハウルの原作ではハウルの故郷でもある訳ですが(ウェールズ出身だし)、こちらではあくまでもジブリの方の路線で行くつもりでおります。
ここまで読んで下さって有り難うございました。次も多分あると思うので(結構ノッてたりする…(爆))、興味ある方はお待ち頂ければと思います。