いとしいあなたへ
その4

4444HIT キリ番作品







水の中は安らぐ

竜となったハクは、水の流れの中で丸くなっていた

あの時よりも流れはないけど

確かにコハクの流れ

自分の中の奥深いものが、覚えている



心地よい水に身を任せていたハクは、ふっ‥‥と目をあけた

ちゃぽん‥‥と水面に波紋が出来る。

遙か上の水面を見つめる――――――

そのとたん、ハクは全身で何かが侵入して来た事を感じ取った。

‥‥‥!?

ハクの驚愕は、すぐ狼狽に変わる。


―――――千尋!?


千尋の姿を確認して、ハクは慌てて千尋の元に舞い上がった。

そっと千尋の体を包むと、彼女はハクの頭を引き寄せて頬をすり寄せて来た。


水の中では千尋は息は出来ない

なのに、千尋は微笑んで唇を動かした。

――――いつまでたっても帰ってこないから、私、きちゃった

千尋の腕がハクの体を抱きしめる。

――――かえろう

――――私の元に、かえろう。ハク。



ハクの姿は、いつの間にか竜からヒトの形へと戻っていた。

千尋に優しい微笑みを返す。


――――かえろう。千尋。


ハクは千尋の体を抱きかかえると、そのまま水面へ――――光のある方向へと浮上していった。











ざばぁっと水面に顔を出すと

「ああ! やっと戻ってきたか!!」

淳二が心配そうに水面をのぞき込んでいるのがわかった。

「荻野、止めるのも聞かないで湖に飛びこんじまうから‥‥‥」

「ごめーん」

千尋は悪びれた様子もなく、淳二にぺろっと舌を出してみせた。

「すまない‥‥」

ハクのほうもそう言葉を返すと、千尋をまず押し上げてそれから自分も地にあがった。

服はびしょぬれ。

髪からは後から後から滴が流れ落ちる。

「あーあ、二人とも‥‥そんな格好じゃ乾くまで帰れないぞ」

苦笑しながら淳二が言う。

「すぐに乾くよ‥‥いい天気だから」

ハクはそう答えて微笑むと、空を見上げた。


いつかの時の空と同じように、今日の空も真っ青に晴れ渡っていた。








またいつもの日々が戻ってくる。

「ハクー!!」

宿題やら何やらを持って歩いてくる千尋を、ハクは森の入り口で待っていた。

が。

「今日はおまけつきだぞー」

後ろにいる人物を確認して、ハクは少なからず驚きを隠せない。

「‥‥君まで?」

にこにこ笑っている淳二の前で千尋はごめんっと手を合わせた。

「どーしてもついてくるって。その‥‥一度ハクが竜になるトコ見せちゃったでしょ? あれからもう一度ハクが竜になるところ見るんだって聞かなくって‥‥‥」

「オレは目の前で見た事に関しては信じるほうなんだ。今日は徹底的に聞き出してやるからな」

ハクは苦笑してきびすを返した。

「おいで。森も君を歓迎してくれているようだから」

優雅な足取りで歩いていくハクに、淳二はキョトンとして立ちつくしている。

その彼の横腹を千尋がこづいた。

「ほらっ、ハクのお許しも出たから、行くよっ!」



当分、森は賑やかな毎日が続きそうである。





END


4444キリ番です。ハクのやきもちというリクエストでした。しかし、カオナシや坊だとブラック化して全面戦争という方向に行きそうだったのでそれは今度にしておいて(まて)、ちょっと文学青年風ハクに挑戦(謎)。しかしその為にオリジナルキャラを出す羽目になってしまいました(汗)。オリキャラ嫌いな人すみません(T▽T)。コハク川に帰ってくるというシチュエーションは是非やりたかったので、出来て(自己)満足( ̄▽ ̄)。




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