Curse(カース)
その1







森でゆったりとした時間を過ごしていたハクは、突然がばっと起きあがった。

「‥‥‥千尋?」

上を見上げれば太陽はまだ高い。

まだ学校で勉強をしている時間の筈だ。

―――――千尋の気が乱れている。

目を閉じて千尋の気を追う。



―――――今、学校から家のほうへと向かっている。

息せき切って――――千尋の心がひどく不安に彩られているのが気配で分かる。

何か、あった?

ハクは木から飛び降りると、千尋の家の方角へと走りだした。






ハクが千尋の家の前に到着した頃、ちょうど千尋が走ってくるところだった。

「千尋! どうした!?」

「あ‥ハク‥‥!!」

千尋はハクの前まで来ると、あがってしまった息を整えようともせずにハクの服を握りしめた。

「ハク‥‥ハク‥‥どうしよ‥‥どうしよっ‥‥」

「落ち着いて、千尋!」

千尋の二の腕をつかんで腰が抜けそうになっている千尋を支える。

見る間に千尋はぼろぼろと泣き出してハクにしがみついてきた。

「千尋! 帰ってきたか!!」

その時、家の扉があいて、千尋の父が顔を出した。

「っと‥‥ハクくんも一緒か。ともかく、家に入ってくれ!!」

娘と男が抱き合ってるのを見たらこの父なら動転する筈が、今はその余裕もないらしい。

ハクは泣き崩れている千尋の肩を支えながら、荻野家へと入っていった。