Curse(カース)
その18










森は静まりかえっている。

その静寂を破る気配に、大木の上で休んでいたハクは身を起こした。

「ハク―――!!」

大木の下で制服姿の千尋が手を振っている。

その手には、白いものが握られていた。




「美晴さんからの手紙なの」

「今日届いたの?」

「うん」

千尋に木の根元に座るように勧めて、ハクも腰を下ろす。

かさかさと手紙をあけて、千尋はハクにも見えるように手紙を差し出した。




美晴からの手紙には、呪いをかけた事への詫びと――――そして妃夜良川のその後について書かれていた。

あの時ハクが言った通り、妃夜良川は埋め立てられる事が決定したらしい。

主を失った川は、もう誰にも制御できない。

元々死にかけていた川は、主を失った事で永遠に沈黙したのだ。

しかし、土地が生まれその上にマンションが建つ事で、あの街はより発展するだろう。



あの神を省みるものは誰もいない。




そして、手紙の最後に目をやって―――――

「‥‥2人仲良くお幸せに。って書いてある‥‥」

千尋が少し頬を赤らめてハクを見つめる。

千尋の照れが伝わったのか、ハクの方も少し頬を赤らめた。

「‥‥‥ぁ、そ、そうそう。今度の休みに‥‥行かない? 妃夜良川に」

手紙をかさかさとしまいながら、取り繕うように千尋がそう切り出す。

「‥‥きちんと、お別れ言ってなかったから。あの主さんに」



胸がちくん、と痛む。

あの神はもう何処にもいない。

でも。

あの神がいたという証はあそこにしかない。



「‥‥そうだね。行こうか‥‥2人で」

「うん!」

ハクは、満面の笑みを浮かべる千尋を眩しそうに見つめた。






――――愛しい千尋。


彼女のこの微笑みを――――ずっとそばで見守る事が出来ますように。




今のハクが願うのは、ただそれだけだった。



END



よぉぉぉやく完結です。長かった。(私にしては)大作にもなりました。色々と書きたかった事けど構成の都合上入れられなかったものも多いのですが、とりあえずはこの形で完結です。シリアスというか色んな意味でダークになってしまいましたが、ぃやーな気分になった人も多かったのではないでしょうか(汗)。基本はラブラブなんですよこの作品。一応(汗)。しかしこれでようやくもう一つ書きたかった方に着手出来そうです。良かった良かった(謎)。