異邦人〜エトランジュ〜
その17
それから数日後。 風花と千尋、そしてハクはあの草原に立っていた。 こちらの世界と、現実世界との境目。 ここをわたれば、現実の世界に戻れる。 「元気でね。‥‥もうちょっとしたら私も向こうに帰るから。そしたら電話するよ」 「振り返っては駄目だよ。いいね」 千尋とハクの言葉に風花はうん、と頷いた。 「今までありがとう。私‥‥‥帰るね」 一歩歩もうとした風花は、最後にもう一度だけ振り返った。 「‥‥‥‥‥あのっ、千尋!」 「え?」 手招きする風花に、千尋は素直に近づいた。 「‥‥ありがと」 背伸びしてくる風花に、千尋は何の疑問も抱いていなかった。 だから。 今唇に触れたやわらかいものが何なのかを理解するのに時間がかかった。 「風花!!!?」 ハクが声を荒立てるのがおかしくてたまらないのか、風花は笑い声をあげた。 「えへへ、これで二人にキスしちゃった! じゃあね!!」 そのまま振り返らず走っていく風花に――――千尋はただ呆然と立ちつくすばかりだった。 風花の姿が草原の中に消えてしまっても、ずっと。 「‥‥‥千尋?」 心配そうに目の前で手をひらひらさせるハクに、千尋はようやく我に返った。 「あ、ああ‥‥ハク‥‥」 「‥‥大丈夫?」 そう問われて、さっきのことを思い出し―――千尋ははぁぁぁ、とため息をついた。 「‥‥た、立ち直るのにちょっと時間かかりそう‥‥」 ファーストキスはそりゃハクに捧げてるのでいいけど でも まさか女の子ともキスすることになるなんて思わなかった!! 男の子だったらいいって訳でもないけど あああ、当分忘れられそうにない‥‥ そんな考えが頭をぐるぐる回っていた千尋が気がついた時には、もう遅かった。 ハクが千尋の顎に手をかけ、そのまま唇をふさいできたのだ。 「ハ‥‥ク‥‥っんっ!」 ふさがれた唇の熱さに目眩がする。 ハクの流れるような黒髪が自分の頬にかかる。 千尋は目を閉じてハクが与えてくる熱に耐えるので精一杯で。 せめてもの抵抗にハクの服をぎゅっと握りしめる。 「‥‥は‥‥」 唇が離れた瞬間、千尋は思わず吐息を漏らしてしまった。 「―――これで、忘れられるだろう?」 「―――ハ‥ハクのばかぁっ‥‥」 少し動いたら再び唇が触れてしまうような至近距離でそう囁きかけるハクに、千尋は顔を真っ赤にするしか出来なかった。 END |
完結です。20000から30000の間はこればっかり書いてたような気がします。今までの中で一番難航した作品でした‥‥だって、千尋が突然私の考えている事と違う事を言い出すんですもの!!(汗) このEDに至るまでに実に4回、紆余曲折がありました‥‥(汗)。 そして、「風花(ふうか)」という名は風にのって雪が舞う現象(ですよね?)「風花(かざはな)」からとりました。なので、ハクの魔法も「水と風の名において」を使いました。千尋が「水」の力が強い名であるのに対抗(笑)して風花は「風」の力が強い名にしてみたのですが‥‥ついでに苅野、というのには土のイメージもつけてみたり。色々と実は考えて名前をつけてみた訳ですが‥‥いかがでしたでしょう?? |