翼はもうはばたかない
その1


















永遠なんて     あるはずがない





















「ハクっ」

森にやってきた千尋は、ハクの姿を探してあたりを見回した。

「?」

何処にいるんだろう。

いつもこの木の近くにはいるのに。

「ハク?」

もしかしたら近くの川にでもいっているのだろうか?

そう思いつつハクの姿を探して歩いていく。





いた。

川のほとりに膝をつき、水面を見つめている。

「ハ‥‥」

ハク、と呼びかけようとして――――千尋はぎょっとした。






――――ハクの姿が‥‥消えかけている?



向こう側が透けて――――――









「ハク!!!」

千尋は思わずハクにしがみついていた。

「え? ‥‥千尋? どうかした?」

ハクの方が驚いて千尋を受け止めて―――不思議そうに見つめている。

「何か、あったの?」

ハクの言葉にも応えられず、千尋はただハクをぎゅっと抱きしめていた。















「何でもないってば」

千尋の様子がおかしかったのを気にして、ハクは何度もその理由を問いただしてくる。

「でも」

「ホントよ。何でもないの」

千尋が頑として言い張るので、とうとうハクの方が折れてしまった。

「分かった‥‥‥でも心配事があるなら、私に言うんだよ? 1人で悩んでいないで」

「分かってる」








確かに

あの時ハクの姿が消えかけているように見えた。

絶対に―――見間違いなんかじゃない。

でも


ハク自身に聞くのは怖かった。

もし聞いたら―――二度と会えなくなってしまうきっかけを作りそうで。

ようやく会えたのに。

離れたくない。






それでもその事は気のせいだったと思いこむようにして、千尋は考えないようにしていた。

考え始めたらドツボにはまる事は分かっていたし、考えても仕方のない事だと思っていたから。




でも





「‥‥調子、悪いの?」

「ん?」

ハクの顔色が良くないような気がして、千尋はそう問いかけた。

「調子悪いんじゃない? 顔色が良くないよ?」

「そうかな。確かにちょっと体がだるいと思う日はあるけど‥‥そう気にするほどでもないよ」



千尋はきゅ‥と胸を押さえた。



この人を失うのだけは嫌。

そう思うと涙がにじんでくる。


「千尋‥‥‥!」

涙をこぼした千尋に、ハクが仰天して肩を抱いて来た。

「大丈夫だから‥‥千尋、泣く事はないんだよ」

「ん‥‥分かってる。けど‥‥」

涙が止まらない。

千尋は手の甲で涙を拭いつつ、ハクに身を任せていた。












HOME          NEXT