下剋上
その1
19000HIT キリ番作品
「ううう‥‥」 千尋は従業員の休む部屋でぐったりと横たわっていた。 「お疲れさん。今日も大変だったねぇ」 同じ従業員のおねえさまからそう声をかけられ、千尋はははは‥と乾いた笑いを返した。 仕事は滞りなく順調に終わったが、その後ハクに追っかけられてしこたま逃げ回り。 ハクが湯婆婆に呼ばれたことでようやく無罪放免となって部屋に戻って来たのだ。 しかし。 どうして自分ばかりがこんな毎日を送らなければならないのか。 そう考えると何となく腹がたってくる。 ―――――何とか、あっと言わせたい。 元々負けず嫌いなところがある千尋であるから、いつもいつもハクにしてやられてばかりの今の状態は決して精神的によくはない。 何とかあっと言わせる方法がないものかと千尋は一人悶々と考え始めたのであった。 次の日。 仕事も終わり従業員達は口々に「お疲れさん」と声を掛け合いながら部屋へと戻っていく。 が、そこに千尋の姿はなかった。 「っかしいな‥‥どこにいったんだ?」 リンがキョロキョロと辺りを見回していると向こうからハクがやってくるのが視界に入った。 ―――――げ。 と思いつつそーっと逃げようとしたリンは、その当の本人から「リン」と声をかけられてしまい、仕方なく立ち止まった。 「‥‥ンだよ」 「千はどうした?」 「しらねぇよ。オレも探してるとこなんだ」 リンも知らない――――と聞いて、ハクの目がすっと厳しくなる。 「ったく、どこに行ったやら。後行きそうな場所といったら―――――」 リンはそう呟いて、ふと心当たりを思い出した。 「―――――あ」 「思い出したのか」 すかさず聞いてくるハクをちらっと睨んで、リンはその場所を口にした。 「釜爺のところだ、きっと」 リンとハクは釜爺のいるボイラー室に続く潜り戸を開けた。 「チィ、チィ、チィ」 ススワタリ達がわさわさわさわさ、と騒いでいる。 「おぉ、おまえら、いいところに来た」 釜爺がなぜか焦っている。 「どしたよ、釜爺」 リンがひょい、と下をのぞき込むと。 「千尋!?」 「千!!」 ススワタリ達に囲まれて、千尋が大の字になって寝っ転がっていた。 |