下剋上
その3

19000HIT キリ番作品






瓶の中身が半分以下に減る頃。

ハクにのしかかったまま一升瓶をラッパ飲みしていた千尋が突然こてん、とハクにもたれかかって来た。

「ち、千尋‥‥?」

千尋はすーすーと寝息をたてて眠っていた。

一升瓶が床に転がり、中身がとろとろとでていく。

「あああああもったいないもったいない」

あわててそれをすくいあげている釜爺とともに、リンが待避場所からでてきた。

「千‥‥‥どうだ?」

自分の腕の中で眠る千尋のあどけなさに、ハクは大きく息をついた。

「眠ってしまった‥‥‥アルコールが回ってしまったんだろう」

リンははぁぁぁ、と息をついた。

「よかったぁ‥‥こいつこんなに酒乱とは思わなかったぜ」

「嬢ちゃんに酒は飲まさないほうがいいな‥‥これからは気をつけんとな」

ハクはすやすやと眠る千尋の髪をそっとなでてから、ぎらっとリンをにらみつけた。

「‥‥‥‥私をおいて逃げたな?」

ぎくっとリンが後ずさる。

「いや、その‥‥おまえなら千尋の一撃食らっても全然応えなさそうだしさ〜〜〜」

「リ〜〜〜〜〜ン〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜‥‥‥」


リンは「用事思い出したからオレ行くわ!!」とさっさと逃げ出してしまい、千尋を抱えたままのハクはそれを見送るしかできなかった。










さて、次の日。


「あ、あいたたた‥‥‥」

ボイラー室で意識を取り戻した千尋は、凄まじい頭痛に顔をしかめた。

「み、みず‥‥」

目が開けられず手探りで水を探す千尋の手に、コップが手渡された。

それを一気にごくごくと飲み干して一息ついて――――千尋はようやく目を開けた。

ハクが自分を見つめている。

その後ろからは釜爺も。

「‥‥ハク? お‥‥おはよう」

「おはよう。‥‥気分はどう?」

「最悪‥‥‥頭ガンガンする‥‥それに何で私、ボイラー室にいるんだろ‥‥あったまいたぁ‥‥」

頭を抱え込む千尋に、ハクと釜爺は顔を見合わせた。

「昨日のこと‥‥覚えとらんのか?」

釜爺の言葉に、千尋は不思議そうな顔をした。

「昨日? 昨日‥‥‥昨日‥‥‥何か‥‥したっけ」

思い出そうとしているらしいが頭痛が邪魔をしているらしく、千尋はうーとうめいた。

「思い出さなくていいから‥‥もう少し休みなさい」

千尋は言われるままに横になり、丸くなって目を閉じた。

やがてすーすーと寝息を立て始めた千尋に、ハクと釜爺はため息をついた。


「――――酒はタブーですね」

「そうじゃな‥‥」




そして。

千尋は自分のしたことを知らぬまま、ハクへどうやって仕返しをしようかと悩むことになる。











END

19000キリ番作品です。前回も酒ネタは使いましたが、今回は酒乱ということで‥‥(爆)。覚えていないのもお約束。でないとブラックハクに向かっていく勇気は千尋にはないんではないかと‥‥(笑)。逆キレも考えましたが、ハクに睨まれたら我に返りそう(笑)。




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