桜の幻影
その10
「ハクーぅ」 ハクは振り返り、苦笑した。 「またその名で呼ぶね………何時になったら「父」と呼んでくれるんだろう?」 駆け寄ってきた、まだ3歳ほどの小さい女の子を抱き上げ、ハクはそう問いかけた。 「だぁって。ハクはハクだもの」 ぷぅと頬を膨らませて訴えるその表情に、見ていた千尋がクスクスと笑みを漏らす。 「きっと私がいっつも「ハク」と呼んでるから、桜も真似してるんだね」 子持ちの人妻になったというのに、まだ20歳をすぎたばかりの千尋は、10代の頃と何も変わらない。 そして、ハクも。 「私も「お父さん」って呼ぼうか?」 「やめてくれ……千尋にそう呼ばれたらどうしていいか分からなくなる」 ハクにぎゅっと抱きついたままの我が娘を見つめ、千尋は心の中で繰り返しただ一つの事を想っていた。 ――――桜蘭。 ――――あなたは、今幸せですか? END |
たいっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっへんに長くなりましたけども、完結です。いや、この終わり方は私も意外でした(書いた本人が言うなそんな事)。あっあっ、石を投げないでクダサーイ!!!Σ(゚д゚) 母となった千尋、父となったハクではありますが、その娘は二人の血をひく者であり、ハクに恋する娘でもある。深読みするととんでもない三角関係のできあがりっ♪ ……いや笑い事じゃないんですけどもね(汗)。どうなるんでしょうねこの後。娘―――桜が成人した時に、どうなるかが想像するだに恐ろしいというか楽しみというか…………。何はともあれ、ずっと待って下さった方々有り難うございました。これからもどうぞよろしくお願い致します……m(_ _)m |