かごめかごめ
その1












かごめ かごめ




かごのなかのとりは




いついつでやる




よあけのばんに




つるとかめがすべった




うしろのしょうめん だぁれ






































はっ‥‥とハクは上を――――頭上を見上げた。

薄暗い天井。

かすかに漏れる光から、今は外が昼らしい事はわかる。

すっく‥と立ち上がってハクは手をそっと掲げた。

ハクの手に反応するように、目の前に青い光の膜が現れる。

それに呼応するように、ハクの足下に六芒星の模様が現れた。

「‥‥くっ‥‥」

ハクは自分の体を抱きしめて、そのままがっくりと崩れ落ちた。

「‥‥だめか‥‥」




ハクのまわりに、光の模様が描き出される。

その模様はまるで竹の籠の編み目のよう。


ハクはその中に閉じこめられていた。







あがくのをやめ、息をつく。

あれからどのくらい時がたったのだろう。


「―――――千尋‥‥」


ハクは愛しい少女の名を呼んで、ため息をついた。











ハクが帰って来ない。

「どうしたんだろう‥‥」

森の、いつもハクがいるはずの大木の前で千尋はウロウロとクマのように行ったり来たりを繰り返していた。

ハクが千尋に「仕事が入ったんだ」と教えてくれたのは一週間前だった。

何処からハクの存在を聞きつけたのか―――――千尋にはそれがまず疑問だった。

千尋の両親は、ハクを普通の人間だと思っている。

ハクもこちらの世界で生きる為には、魔法が使える事や人間ではない事を悟られないようにしている筈。

どうやって、ハクが”力”を持っている事を知ったんだろう。

どうしてその人は―――――ハクの存在を知ったんだろう。










「‥‥ねぇ」

ハクが仕事に行く日。

千尋は朝早くからやってきて、1人ぐずぐずしていた。

「千尋‥‥服を離してくれないと動けないんだけど‥‥」

ハクの服をぎゅっと握りしめたまま、千尋は離そうとしない。

「‥‥いやな予感がするよ。断る事とか出来ないの?」

ハクは苦笑して、千尋の髪をそっと撫でた。

「今日のところは、とりあえず見てくるだけだから。話によると何か取り憑いてるとか‥‥‥私は陰陽師じゃないから、そういう話になるとどうする事も出来ないし。精霊たちの力を借りるとなるとそれなりに準備もいるしね」

「‥‥‥‥‥‥」

ハクがどのくらいの力を持っているのかというのは千尋にはわからない。

竜にもなれるんだし、いきなり傷つけられたりとかそういうのはない――――と信じてるけど。

「千尋」

「‥‥‥」

まるで幼い子供に諭すように呼びかけられ、千尋はしぶしぶ手を離した。

「大丈夫‥‥危ないことはしないから」

「‥‥‥」

「ね?」

千尋は言葉なくこっくりと頷いた。










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