かごめかごめ
その2
そして あれから一週間。 ハクはまだ戻って来ない。 何処から仕事が舞い込んだのか 何処に行ったのか 千尋には全く見当もつかない。 ただ待つしか出来ない。 人の気配のしない森で、千尋はため息をついた。 よくハクがよりかかっていた大木にそっと手を当てる。 「‥‥ハクが何処に行ったか、知らない‥‥?」 ハクならばこの木と話が出来るのだろうが、普通の人間である千尋にそんな事が出来る筈もなく。 「‥‥‥はぁ」 大きく息をついたとたん――――涙が落ちた。 一度涙が流れ始めると、あとからあとから流れてくる。 ――――どうして戻って来ないの? 何かあったの? 無事でいる? 怪我してない? 「‥‥ハク‥‥声が聞きたいよ‥‥‥」 その夜。 千尋はまんじりともせずベッドの中で横になっていた。 満月に近い月の光がカーテンの隙間から漏れてくる。 「‥‥ん‥」 早く眠らないと、明日も学校がある。 ここの所睡眠不足で体調も良くないのだが、まさかハクの事が心配だから学校を休む、という訳にもいかない。 ごそごそと寝返りをうっていたが、やがて起きあがる。 「‥‥ホットミルクでも飲もう‥‥‥」 パジャマの上にガウンを羽織り、千尋は部屋の扉を開けた。 トントン‥と控えめな足音をたてて階段を下り、台所へと歩いて行く。 台所へと続くドアを開けようとした千尋は――――背後に何かを感じてはっと振り返った。 街灯の明かりが微かに廊下を照らしている。 その中に 不自然に浮かび上がる白い人影。 「‥‥‥‥っ‥‥」 幽霊。 異形のものには他の人に比べて慣れているとはいえ、こうやっていきなり視ると驚く。 「きっ‥‥」 悲鳴をあげかけた千尋は、その人影が良く見知った形であるのに気がついてはっと口を押さえた。 「―――――ハ‥ハク!?」 ハクの姿が、千尋の目の前に映し出されていた。 |