風邪の功名
その2

9000HIT キリ番作品







熱で頭がぼんやりしているのと、体の節々が痛いのと、それから来る精神的不安定なのとで、千尋はパニックに陥り、ハクの腕を両手で弱々しくつかんで懇願を始めた。

「ハク、やめてっ。お願いっ! いや!!」

端から聞いたら何をしているのかと思われるような声と台詞だが、ハクは気にする様子もない。

「そんなに暴れたらよけいに悪くなる」

ハクの言うとおり、千尋はすぐに息切れしてそのままぐったりと横たわってしまった。

千尋が落ち着いた(というよりもぐったりしてしまったという方が正しい)のを確認し、ハクは千尋の首の後ろに手を回した。

薬を半分ほど自分の口に含む。


そして。

そのまま顎をつかんで半ば無理矢理に千尋の唇を開かせると、自らのそれを押しつけ、唇を割り込ませて薬を流しこんだ。







「‥‥‥!!!?」

いきなりの感触に体を硬直させたまま、千尋はハクが流し込んできた薬をそのまま飲み下した。

こくん、と千尋が飲み下したのを確認して、ハクは残りの薬をさっきと同じ方法でもう一度千尋に飲ませていく。

今度は千尋はハクの瞳を見ないようにと目をぎゅっとつむった。






コップの中の薬が全部なくなったのを確認して、ハクは千尋から手を離しもう一度布団をかけ直した。

「これで暫く眠ったらだいぶ楽になっている筈だ」

機械仕掛けの人形のようにコクコクと頷く千尋の髪を撫で、ハクはふっと微笑んだ。

「――――早く良くおなり。待っているから」

ハクがそっとふすまをしめ歩いていく音を聞きながら、千尋は1人真っ赤になってただ天井を見つめていた。






くすり。

苦かったけど。

でも。

やわらかかった。



ぷしゅ〜〜、と1人熱を更にあげる千尋であった。








「おお、ハクか。あの薬を嬢ちゃんにちゃんと飲ませたか?」

釜爺が薬草をこねる手を休めてハクを振り返る。

ハクは釜爺を見上げ、髪を揺らして頷いた。

「ちゃんと飲ませたよ。でも‥‥あの苦さはちょっといただけないね。もうちょっと何とかならないかな」

「そりゃ良薬は口に苦しって言うだろ。その分良く効くんだから我慢しな」

そうして再び手を動かし始めた釜爺は、ふと気がついてハクにもう一度視線を向けた。

「ハク、おまえさん、なんであの薬が苦いっての、知ってるんだ?」

ハクは随分と上機嫌らしく、ふふっと笑みを漏らした。

「――――さあね」









END


9000キリ番作品です。なんとっ!! 初の口ちゅーだったりします(笑)(目的はどうあれ)。ようやくここまでこぎ着けられたハク様は上機嫌でしょうが私も上機嫌です(まて)。長かったなぁ‥‥(よよよ)。しかしこれでたがが外れなきゃいいんですが‥‥ちと心配(^^;