I want to know


180000キリ番作品








仕事が終わる頃になると、時間は夜中をまわっている。

皆が片づけを始めた頃を見計らって、千尋はハクのところへと出かけていった。

ハクの部屋にはまだ灯りがついている。

ここにミズハがいるのだろうか?

「…あのぅ…」

襖の前で声をかけると、「誰だ」という声が返ってきた。

「千です。今…よろしいでしょうか」

ややして、襖が開き――――ハクが顔を出した。

「千尋、どうしたんだ一体。私の部屋に来るなんて珍しいじゃないか」

そういえばハクの元に来るのに用事を考えてなかった。

しどろもどろに出てきた言葉は―――――

「その……ミズハさまは?」

やはりミズハの事だった。

「ミズハさまならそこで眠ってる。起きていると駄々をこねてたんだが、やはり体は睡眠を欲していたようで」

指し示す方を見ると、ミズハが布団に入ってすーすーと寝息をたてているのが見えた。

「……気になった?」

耳元でハクに言われ、どきんと胸がはねる。

しかしここまでやってきた以上、取り繕っても仕方ない。

「………うん」

「私がミズハさまに心変わりするとでも思った?」

「そんなこと…!」

大きな声を出して、ミズハが起きると気がつき、声をひそめる。

「そんな事は思ってない。でも……気になるの。ミズハ様がただの子供でも……きっと気になってたと思う。自分でも嫉妬深くてヤだなって思うけど………」

ハクは千尋の肩をそっと抱いた。

「私もそうだよ? 千尋が他の従業員と仲良くしていると気になってしまう」

「……そうなの?」

「うん」

千尋はようやく強張っていた表情を緩めた。

「じゃあ、おなじなのね……私たち」




信じている

けど気になる

自分が傍にいない時のあなたは、一体何をしているのか

私の知らないあなたが、どんな表情をしているのか

縛るつもりはないのに、知りたくてたまらない




「……さぁ、今日の仕事もきつかっただろうからはやくお休み。話は明日出来るから」

「うん、そうするね」

ミズハがまだそこにいるのに、ハクと話をしただけで随分と気が楽になった。

リンのアドバイスは非常に的を射ていたといえるだろう。

「おやすみなさい……ハクも早く休んでね」

「ああ、お休み」

襖をぱたんとしめて、千尋は息をついた。

しかしその溜息は、決して不快なものではなかった。


「さ、部屋に戻ろう」

そのまま千尋は廊下を歩き去っていった。










次の日。

「ほんに目を離したスキに………コハクには迷惑をかけたようですまなかった」

伊邪那美がミズハを迎えに来た事で、この事態も終局を迎えた。

ミズハはぷくっと頬をふくらませている。

「ヘタに大人であった時の記憶がある為に、何でも出来ると思っているようで………」

「かあさまはミズハの事を子供扱いしすぎなのじゃ……」

「そなたは精神も体も力も戻ってしまっているのだ。力が暴走したらわたくししか止められぬ。それをわかっているのか?」

そう言われるとさすがのミズハもそれ以上口答え出来ず、押し黙ってしまった。

「ではまた改めて来させて貰うゆえ、今日はこのへんで」

「またのお越しをお待ち申し上げております」

伊邪那美命と罔象女神が去っていくのを、湯婆婆以下湯屋従業員一同で、深々とお辞儀をしてお見送りをしたのであった。




「はあ」

間の抜けた溜息をもらしたのは千尋。

ハクがくすくすと笑みを漏らした。

「何で笑うのよぉ」

「いや………緊張していたんだねと思って」

「そりゃそうよ………人間の姿はしてるけど、周りは皆すんごい力を持った神様ばかりなんでしょ?」

知らず知らずのうちにもう一度溜息をついてしまい、ハクはついに耐えきれないというように笑い出してしまった。

「ハク、笑いすぎ……」

「ごめんごめん。………でも」

ふと、ハクが何かを言いかけたのに気づき、千尋はん? と目で続きを促した。

「千尋が私の部屋に夜這いをかけて来るほどに気にしていたなんて、思わなかったよ」

夜這い。

と聞いて千尋はかぁぁぁっと赤くなった。

確かにあんな時間に男の部屋へと一人で訊ねれば、夜這いと思われても仕方ないかもしれない。

「ち、ち、違うわよぉっ! そんなんじゃないわっ」

「じゃあどうなんだい?」

「〜〜〜〜、ハクのいじわるっ!」

千尋は顔を真っ赤にしたまま、ずんずんと歩き出した。

その後ろをハクが悠々とした足取りで追う。

その姿は、どこから見ても仲睦まじい恋人どうしの姿だった――――――というのは従業員たちの話である。





END


180000キリ番作品です。お待たせ致しましたm(_ _)m いやはや半分書き上げたトコで「リクと違うやん!Σ( ̄▽ ̄lll 」と気づいて新たに書いたのがコレです。ちょっと深刻ムード漂いつつもまぁそこまで酷くなく。相手はお子さまですし。女の子の気持ちって微妙なんですよね………いいなぁ恋する女の子って、幸せそーで( ̄▽ ̄)。←オバさんちっくな言葉(爆)




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