愛情の度合い
その3
7000HIT キリ番作品
「ハクさま〜〜〜! お客様がお待ちですぞっ!!」 「わっ、ばか!!」 その声に千尋が小さく悲鳴をあげる。 ハクの方もぎょっとして声のあがった方を見つめた。 倉庫の扉に、従業員たちが鈴なりに群がっている。 そしてその前では青蛙がぴょこぴょこ飛び跳ねてハクを呼んでいた。 「馬鹿者! もう少しであったのに!!」 「何が?」 そういう方面には全く無頓着なのか、父役が小声で言うも青蛙はさっぱり理解していないようである。 口々に青蛙を責め立てる言葉を聞きながら、だんだんとハクの手がふるふると震え始めた。 「‥‥‥‥まえら‥‥」 低くハクが呟く。 ぎくっとした従業員たちの動きが止まった。 「おまえら、出て行け――――――――――っっっ!!!」 逆キレしたハクの力か、倉庫にたてかけてあった荷物が次々と従業員たちに向かっていく。 従業員たちは慌てふためいて倉庫の前からちりぢりに逃げていった。 「‥‥‥っくくくく‥‥あはははは!」 静かになった部屋に、千尋の笑い声が響く。 笑い続ける千尋にハク自身もくすくすと笑い出す。 倉庫に暫く、二人の笑い声が響いていた。 「千! こっちに人でがたりないんだ、来ておくれ!!」 「はぁーい!!」 慌ててばたばたと駆けていく千尋は、濡れている床につるっと足を滑らせた。 「きゃぁっ!!」 転ぶ! と思った瞬間、千尋は体を抱き留められていた。 「気をつけないといけないよ、千尋」 ハクが千尋を抱き留めてくれていた。 「あ、ありがとっ‥‥えへへ、気をつけるね」 そう言いつつハクの姿を見た千尋は「わぁっ」と声をあげた。 「それ、私が作った水干?」 いつもの白い水干とは違う薄い青の水干に気づき、千尋はハクを嬉しそうに見上げた。 「うん。早速着てみてるんだ。サイズもぴったりだったよ」 ありがとう、と言いつつハクはそっと千尋の額に口付けする。 そのとたん、ひゅーひゅー!という声が通りかかった蛙男や湯女の間からあがった。 往来(ちょっと違うが)のど真ん中でのほほえましいラブシーンへの、これまた好意的な反応に千尋はかぁぁっと赤くなった。 「そ、そ、それじゃあっ! また後でね!!」 慌てて走っていく千尋を見送り、ハクも口元がゆるむのをおさえられなかった。 「な? 行ったろ? 数日待てって」 ハクの後ろをつつつつ‥‥っとリンが通っていく。 ハクがぎくっと振り返った時には、もうリンの後ろ姿はかなり小さくなっていた。 ――――何となく、弱みを握られたと思うのは、気のせいだろうか?? 一瞬、不安を感じるハクであった。 油屋の夜が、今日も始まる。 END |
7000キリ番作品です。ギャグで千尋にめろめろなハク様を、という事で書いてみました。どっちもめろめろですねこれは(笑)。<千尋とハク 時間設定とかそういうのはもう全く無視してください(爆)。何となくギャグよりもほのぼのな作品になった気がするのが心残りです(汗)。 |