Lunatique pleine lune
その2

60000HIT キリ番作品









ハクの部屋も月明かりに満ちている。

その光があまりにも強すぎて、部屋の隅々が見渡せるほど。

いつもなら全部閉め切ってくれるのに、今日は閉めてくれない。




「‥‥や‥‥窓、しめて」

既に荒くなった息の下、そう懇願する千尋の唇をハクはそっと指でなぞる。

「それでは、千尋が見えなくなる」

「見えなくていいの‥‥だから‥‥」

「大丈夫‥‥‥今日は風もあるから、すぐに雲に隠れるよ」

そう言われて窓から見える空に視線を向ける。

が、雲は何処にも見えない。

「うそつき‥‥雲なんて何処にもないじゃない‥‥」

「‥‥そうだったかな‥」

しれっとはぐらかすハクを、潤んだ瞳で睨み付ける。

「ハクのいじわる‥‥」

甘い響きを伴うその言葉に、ハクは微笑みを浮かべた。

「意地悪だよ、私は‥‥あまりにも千尋が愛おしすぎて‥‥自分を抑えられないのだから」

「ぁ‥‥んっ」

唇を塞がれ、言葉も発せず、ただハクを受け止め、千尋はその刺激に酔いしれていた。


月が見ている

それだけで体が熱くなる




長い口づけの後

新たな刺激を与えようとするハクの首に腕を回し、千尋は恥ずかしそうに囁いた

「‥‥月が見てるんだから‥‥優しくして‥‥」

やはり

自分も千尋も少しおかしくなっているのだろう。

でも

それも悪くない


ハクは優しく微笑んだ。

「努力するよ」












月の魔力がこうさせたんだと信じたい

求め

与えられて

それでも足りなくて


愛してるなんて言葉では表せない

欲しいなんて言葉では足りない




お互いがいなくては、生きていけない



その思いを何度も確認しあって



ハクが我に返った時には

月はとっくにその姿を消してしまっていた。









微かに聞こえる、小鳥の声。

差し込んでくる光は、月の光ではない。





ハクは目を開けて――――視線を隣に向けた。

千尋がすーすーと心地よい寝息をたてている。

ひどくしてしまった日の朝のような泣き顔ではなく

幸せそうな微笑みを浮かべて。


ハクがそっと千尋の髪を撫でると、千尋はんん‥と声を漏らして、目を開けた。

「‥‥起こしてしまったかな」

目をぱちぱちとしばたたかせて、千尋はううん‥と笑った。

「大丈夫‥‥‥もぉ、朝‥?」

「まだ夜が明けたばかりだ。皆眠っているよ‥‥千尋もまだ眠った方がいい」

「ん‥‥」

自分は外の様子でも見てこよう、と身を起こしかけたハクは、腕を引っ張られ、え、と声を上げた。

「もう‥‥お仕事?」

「いや、そうじゃないけど‥‥」

「じゃ‥‥もうちょっとここにいて。まだ一緒にいたいから‥‥ね?」

可愛らしい仕草に艶やかなものを感じ、ハクは苦笑するしかない。

「ここにいたら、私はまた我慢出来なくなってしまうかもしれないよ?」

千尋はちょっと困ったように眉をひそめた。

しかし

「‥‥昨日みたいに優しくしてくれたら‥‥イイ‥」




ハクの指がそっと千尋の顎にかかる。

「そのように誰にでも甘えるものではないよ? 私だけにしなさい‥‥」

「ハクにだけよ‥‥こんな事言うの‥‥ん‥」

言葉はもう続かない。





月の光の魔力が切れたのかどうかは分からないが。

この日の出来事を思い出すたび、千尋が七転八倒していたのは後日談。








END



60000キリ番作品です。この作品、裏にしようかどうしようかすご〜〜〜〜〜〜〜く悩みました。でもせっかくのキリ番を特定の人だけしか見られないのにするのも何だなぁと思い、ギリギリまで頑張りましたっっ。雰囲気はちょっと危ないけど想像しないと分からない程度にまでになってるでしょ??(まて) リクとしては「事の時に千尋がハクに甘える」というもので色々と台詞も書いてくださってたので参考にさせて頂きました(^▽^)。ブラック‥‥というよりも大人なハク‥‥‥だよなぁ、コレは。意地悪くないし。
ちなみに題名はフランス語です。英語だと「Lunatic Full Moon」。「狂気な満月」とでも訳しましょうか‥‥妖しい雰囲気が出ていれば幸いです。




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