Only One

6000HIT キリ番作品




自由で

軽やかで

何物にも縛られない少女



誰もが萎縮する筈の世界で

自由を取り戻し

神をすくい

自分をもすくってくれた少女



彼女にすくわれた者は多い

自分と同じように彼女を欲している者が多いことはわかっている

だからこそ焦る

今はまだ自分の手の中にいる小鳥がいつか自分の元を去ってしまうのではないかという不安がよぎる




その羽根をもいで籠の中に閉じこめてしまいたいと思うのは許されぬ事だろうか

―――――自分のものにしてしまいたい。




          



「ハークっ!」

その声にハクはびくっと目を開けた。

「‥‥あ‥‥」

「熟睡してたね。疲れてるんじゃない?」

ハクは身を起こした。

「‥‥千尋‥‥‥?」

目覚めきっていないらしいハクの様子に、千尋はハクをのぞき込んだ。

「大丈夫? 今、何処にいるかわかってる?」

ハクは暫く考え込んでいたが――――やがて顔をあげた。

「あ‥‥そうか‥‥千尋と二人で、遊びに来てたんだっけ‥‥」

「そうだよ。‥‥ホントに大丈夫?」

今日は油屋もお休みの日。

久しぶりに休みをもらえたというのに何処にも出かける様子のないハクを、千尋が連れだしたのだ。

「やっぱり疲れてたのかな‥‥ごめんね、ハク。疲れてるのに連れ出したりして」

「そんな事はないよ。少し眠ったらだいぶ元気になったし」

「それならいいけど‥‥ほら、おなかすいてない? おにぎりあるから食べようよ」

千尋が自分で作ったらしい不揃いのおにぎりを出してくるのを、ハクはぼんやりと見つめていた。

「はい、どーぞ」

「あ、ありがとう‥‥」

それをぱく‥と口にしつつも、何処か心あらずなハクを心配そうに見つめつつ、千尋は自分もおにぎりを口にした。





ぽつ‥‥と頬に冷たいものがあたる。

「え?」

と千尋が上を見ると、ぽつぽつ‥‥と水滴が落ちてくる。

「雨?」

向こうの空はどんよりと黒くなりつつある。

「夕立かもしれない。どこかで雨宿りしたほうがよさそうだ」

ハクは立ち上がって千尋の手をとった。

あたりを見回しているうちに、雨がどんどん強く降り出す。

「あ、あそこに洞窟があるよっ」

千尋の指さすほうに視線を向け、ハクは頷いた。

「とりあえず、そこまで行こう!」







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