Ring・Ring・Ring
その2
8989HIT キリ番作品
女性が服やアクセサリに興味を示すのはどの世界でも同じらしい。 リンが千尋(とハク)をつれて来たのもそういう店の一つだった。 何処からやって来ているのかはわからないが、結構な数の客がすでに色んな品物を物色している。 「休みの日にはたいていここに来るんだ。結構なモンがそろってるしな」 ふーん、と相づちを打っていた千尋は、可愛らしい指輪を見つけて「きゃー」と黄色い声をあげた。 「かわいいっ。ね、見て見て?」 千尋が差し出す指輪を見て、リンはふーんと頷く。 「やっぱり千ってお子さま趣味だよな」 「もー、なんで?」 「こんなハート柄の指輪が可愛いって言えるうちはまだまだ子供ってことだよ」 「んも〜〜〜いいじゃない、子供っぽくったって!」 千尋はぷうっとふくれるとその指輪を返して別のものを物色し始めた。 そんな千尋の横からすっと腕がのび、一つの指輪を取り出す。 「千尋、指を出して」 「え‥‥」 ちょっとちょっと、と思う間もなく、千尋は左手をハクにとられ、その薬指に指輪をはめられていた。 「ハク‥‥はめる指、違うよ?」 「これでかまわない。‥‥千尋によく似合う」 ハクがはめてきた指輪は、翠色の小さな石のはまった指輪だった。 「これって‥‥ハクの瞳の色とおんなじだね」 指をかざし、石を光にすかしてみる。 石は光を反射させ、きらっと光った。 「きれい‥‥」 うっとりと呟く千尋になんだか嬉しそうなハク。 「‥‥やってらんねー」 向こうで1人悪態をつくリン。 なんだかよくわからない空間がそこに出来て、他の客たちは遠巻きに3人を見つめるばかりである。 「これにしようかな」 せっかくハクが選んでくれたんだし。 千尋は大事そうに指輪を指から抜くと、ハクを見上げてにっこり笑った。 「ありがとう! 私、これにする!」 「わ、ばか千! そいつの値段を見てみろよ!」 リンに言われて千尋が値段を見ると。 「‥‥うそー」 そこには、今千尋が持っているお金のゆうに三倍の値段がつけられていた。 「お、おじさん! どうしてこれこんなに高いの?!」 どうやらこの店の主人と思われるおじさん(とはいえど腕が4本あるあたり、釜爺と同じ種族なのかもしれない)に指輪を見せて、千尋が問いかける。 「んー? ああ、こりゃほんまモンの宝石だな。だから高ェんだよ」 「ホントの‥‥宝石?」 「ああ。ここらでは滅多にとれねぇ貴重な石を加工してあんのさ」 せっかくハクが選んでくれたのに。 しゅーんとうなだれかけた千尋は、その横からのびて来た腕にぎょっとした。 「これがお代だ」 ハクがいとも簡単に支払っている。 「は、は、は、ハクっ!!! これ、すっごく高いよ!? 駄目だよ、そんなに高いもの!!!」 「足りなかったら出してあげると言っただろう?」 「で、でも、これって私の給料三ヶ月分だよっ」 「それは千尋にプレゼントするよ」 いとも簡単に言ってのけるハクに、千尋はもはや返す言葉もない。 「‥‥‥けっ」 リンがやってらんねー、と再び悪態をつく。 「‥‥‥いいの? 私‥‥ハクに何もしてあげられないよ? 返してあげられないけど‥‥」 おずおずと言う千尋の髪をかきあげ、ハクは優しく微笑んだ。 「私が千尋にプレゼントしたかったんだから、気にする必要はないよ」 「ハク‥‥‥ありがとう!」 千尋がうれしさのあまり、ハクに飛びつく。 千尋の方から飛びついてくるなどという滅多にないおいしい場面を逃す筈もなく。 ハクは千尋を優しく、しかししっかり逃げられないようにと抱きしめた。 「‥‥千尋がどうしてもお返しをしたいというのならば、受け取ってもいいけどね?」 それまで甘いムードに浸っていた千尋は、その言葉でさぁぁっと我に返った。 「え‥‥いや、その‥‥」 千尋はドキマギしつつも何とかハクから離れようともぞもぞ動き出す。 しかしその程度でハクの腕がゆるまる筈もなく。 「‥‥‥分割ローンで‥‥支払い‥‥??」 などと言ってみるが、ハクはにっこり笑ってそれを無視してくれた。 「私が欲しいのは‥‥千尋自身だよ。千尋のすべてが欲しい‥‥」 耳元で優しく、甘く囁かれる。 それまでのドキドキ感との相乗効果で、千尋は完全にノックアウト。 ぷしゅ〜〜〜、と頭から湯気を出して、そのまま千尋はのびてしまった。 「‥‥やりすぎだ、バカ」 リンがその後ハクから千尋を奪い返したのは、言うまでもない。 その後、指輪は結局千尋の指に収まる事となる。 が、その指輪はプライベートな時の、右手の薬指に光る事となった。 ――――左手の薬指にはめようもんなら、夜這いかけられるぞ。 とリンに脅されたのが一番の大きな原因かもしれない。 指輪が左手に光る日は、果てしなく遠そうである。 END |
8989キリ番作品です。ブラックハクと千尋にリンをからめて欲しい‥‥という事で、なんかツッコミ役として登場でした(^^; しかし。これはどう見ても「婚約指輪」ですよねぇ‥‥なんかどんどん1人突っ走っているハク様ですが、千尋は果たしてついていけるのか!?(笑) |