新婚さんいらっしゃい
その3
130000キリ番作品
「独り寝が怖い‥‥‥のぅ」 千尋の話を聞いた咲耶は、クスクスと笑うばかり。 「まぁ気持ちはわからんでもない。隣に誰かいるというものは安心するものじゃ」 千尋は照れ隠しにうつむいて、「そうですよね‥‥」と小さく答えた。 「しかし、幸せそうで良かった」 咲耶がうつむいた優しく千尋の頭をくしゃ‥‥と撫でる。 「コハクは竜じゃ‥‥異種族間の婚姻はうまくゆかぬ事が多いからの。だいたいは人間が不幸になる事が多いのじゃが‥‥コハクはうまくやっておるようじゃ」 「そう‥‥なんですか」 はっと咲耶の顔を見る。 咲耶の顔は真剣で、からかいの色は見えない。 異種族間婚姻と言われても、千尋としてはただハクが好きだったから受け入れた、というだけで、そんな凄い事をしたという実感はない。 相変わらず湯屋では怖い帳簿係として怖がられているが、千尋にとってはちょっと強引で甘い旦那様。 「分かっておらぬようじゃの」 「は、はぁ‥‥」 「まぁ良い。早ぅ子を為せ。楽しみにしておるからの」 何か違う意味で楽しみにしているような気もしたが、千尋は素直に「はい」と答えておいたのだった。 「子供‥‥かぁ」 自分がまだ子供だから、自分から子供が産まれるという事など見当もつかない。 いずれはそうなるのだろうとは思うが、今すぐにそういう事は想像の範疇を越えている。 枕を抱きしめたまま、千尋はハクの部屋でぼーっとそんな事を考えていた。 コトン‥‥‥ 何かが動くような音に、千尋ははっと我に返った。 「あ‥‥そろそろリンさんの部屋に行かなきゃ」 ハクの部屋で一人で眠るのは寂しすぎる。 今日はリンたちのところで一緒に寝かせて貰おう。 と立ち上がった千尋は、手からぽとり、と枕を落とした。 「ただいま。‥‥どうしたんだい? 枕なんかもって」 そこにはハクが、いた。 次の瞬間、千尋はハクに抱きついていた。 「そう‥‥寂しい思いをさせたね、千尋」 「ううん‥‥今日もハクは帰らないんだろうと思ってたから、リンさんのところで寝かせて貰おうと思ってたの」 ハクは千尋の背中に腕を回して優しく抱きしめつつ、千尋の話をいちいち相づちを返して聞いている。 「そう‥‥今日、咲耶様から「早く子供を作れ」って言われた‥‥‥楽しみにしてるって」 「咲耶様から?」 ハクの声に微妙な響きを感じつつ、千尋は「うん」と頷いた。 「千尋は、子供欲しい?」 「え?」 今度は逆に問い返されて、千尋はうーんと考え込んだ。 「そりゃ‥‥愛の結晶って言うくらいだし‥‥欲しくないとはいわないけど‥‥」 「じゃあ早速励もうか」 え、という間もなく、ハクの唇が千尋のそれをふさぐ。 しまった―――――――!! はめられた!!! 等と思いつつも、それが決してイヤではなくなっている事に気がつき、愕然とする千尋であった。 2人の間に可愛い結晶が出来るのは、そう遠い未来ではない。 END |
遅くなりました。130000キリ番作品です。湯屋での新婚生活をという事と、咲耶姫を絡ませて欲しいという事で書いてみましたが‥‥‥結婚前とやってる事って同じですね(爆)。何処が新婚生活なのやら‥‥‥書いてみてから気がつき、愕然としたのは私だよ千尋(笑)。 |