千尋の素敵な日常?
その2


222222キリ番作品







結局この日はハクと母親は泊まることになり(父親はどうなるんだ、と言う千尋の問いに対しての母親の答えは「どうにかするでしょう」だった)、ハクは千尋の部屋へと追いやられる事になった。

「学生の間に孫が出来ても、ちゃんと面倒見てあげるからね」

と言う応援の言葉付きで。

「何を勧めてんのよー!!」

「まぁまぁ……」

憤慨している千尋をなだめ、ハクは千尋をベッドに座らせた。

「ハク?」

「久しぶりにゆっくり出来るんだし、言葉に甘えさせて貰おうよ」

「………え、えぇと?」

手を伸ばしてくるハクに、千尋は思わずにじにじと後ずさる。

「わ、私まだ学生だし……」

「でも結婚はして夫婦なんだから、人間社会ではなんの問題も無いはずだよね?」

――――誰よ、ハクに変な事を吹き込んだのは!!!

と思うものの、後の祭りであった。













さて、次の日。

「ハクくんを学校に案内してあげたらどう? 学校はやすみだけど、キャンパスには入れるでしょう」

とにこやかな母親に言われて、千尋は寝不足の頭で頷いていた。

ハクの方は至って元気である。

―――悔しいっ。

とは思うものの、勝てないのは分かっているので黙っておく。

「入れないとこもあると思うけど、いい?」

「構わないよ。千尋が通ってる場所を見られれば良いから」

それならばと用意をして家を出た頃には、太陽はそろそろてっぺんに向かって動き出そうとしていた。








「……で、ここが大講義室。でもまだここで講義を受けたことはないんだけどね」

「大きい部屋だね」

「うん。全部で200人が講義を受けることが出来るって言うから」

そんなことを話しつつ出てきた千尋とハクを呼び止めた声があった。

「あああー! 荻野さんじゃない!? どーしたの、カッコイイ人連れて!」

千尋はげっ、と思わず声を上げて後ずさった。

「千尋?」

今声をかけてきたのは小沢彰子という名の、新たに知り合った友人だ。

千尋と出席番号が近いのもあって何となく仲良くなったのだが――――彰子には大きな欠点があった。

ゴシップ好きでおしゃべりという欠点である。

――――絶対にハクのことを、おもしろおかしく広めるに決まってるわっ!

等と考えているうちに彰子は近づいてきてしまった。

大体呼びかけられた段階で逃げるのは難しい。

―――ここで逃げたらますます変な噂を流されるだけだものね……。

「荻野さんの彼氏? 隅に置けないわね、こんなにカッコイイ彼氏を作ってるなんて!」

「え、ええ……まぁね」

まさか旦那です、とも言えないので曖昧に答えておく。

―――と。

ハクがつんつんと千尋をつついてきた。

「友達かい?」

「あ、うん。小沢彰子さん、ていうの」

「彰子でいいです! 宜しくね……えぇと」

「ハクといいます。宜しく」

と言いつつ微かに微笑みすら浮かべて見せたハクに、千尋は少なからず驚いていた。

―――驚いた。人嫌いなハクが愛想笑いをするようになってるなんて!

きっとあのにぎやかな母と暮らすうちに、色んなコミュニケーション法を学んだのだろう。

……そう考えると、あの母との暮らしも悪いことばかりでは無いと言える。

そして彰子は、というとただでさえ見目整ったハクに微笑まれたのだから、有頂天の極みであった。

「ま、また遊びにきてくださいね! 待ってますから……荻野さんもいいでしょう??」

と半ば睨み付けられるように言われると、「そうね」としか言えない。

―――本当はハクと別の女性が一緒にいるのを見るのは面白くないんだけど。

千尋はぎゅっとハクの袖を握りしめた。

「そ、そろそろ帰ろう? ね?」

「そう?」

「ええ〜残念……またきっと来て下さいね!」

本当に残念そうな彰子を残し、千尋はそそくさとキャンパスを後にしたのだった。










「千尋、そんなに急がなくっても……」

後ろからハクの声がして、千尋ははっと立ち止まった。

「ご、ごめんなさい、ハク……」

どうやら勢いに任せてずんずん歩いてきてしまったようで、現在地はキャンパスの門から200メートルは離れている。

「こ、ここまできちゃったら家に帰るしかないかなぁ」

愛想笑いを浮かべている千尋を見ていたハクだったが、ふっと笑みを浮かべた。

「……これがヤキモチ、というものなのかな?」



――――――!!!!!!!!!




今の自分の状態を見事に言い当てられ、千尋はかぁぁぁぁっと赤くなった。

「な、な、な……」

「……図星?」

さらりととどめを刺してくれたハクに対する千尋の言葉は――――



「ハクのばかー!!!」



という甘いムードも情緒も減ったくれもない言葉であった。














「ダメね、千尋ったら」

帰ってからも照れのせいで機嫌の悪い千尋に、母親が声をかけてきた。

「何でよ?」

「女は少しくらいヤキモチ焼いてるとこをみせた方が可愛いのよ? スキを見せないままじゃ愛想つかされてしまうわよ」

――――そんなこといったって。

とは思うが、既に実の娘より義理の息子の味方となってしまった母親には何をいっても通じない。

「分かった? 千尋」

「分かった分かった……」

投げやりな返事を返して隣にある寝室に向かった千尋は、ぎょっとして立ち止まってしまった。

扉のところにハクが立っている。

「ハ、ハク?」

「待ってたんだ、千尋が来るのを」

そういいつつ、ハクは千尋の方に手を伸ばしてくる。

「私が千尋の事だけしか見てないし興味もないと言うことを、千尋はまだきちんと分かってないようだから……」

「え、あの……っ??」

「今日はじっくりと教えてあげるよ。私がどれだけ千尋を大切に思っているかを」

――――やばい!

と思った時には、千尋はハクに抱き込まれていた。

――――うっそぉぉぉぉっっっっ!! 今日も眠れないの、あたしっ!?

いくらそう思っても、抱き込まれた後では後の祭りであった。







次の日、千尋は昼過ぎまで布団から出てこなかった。









END

大変遅くなりました、すみません(><)。仕事が一段落した……と思ったら風邪を引き点滴を受けなければ行けない羽目に……(汗)。精神力弱々なのを露見してしまいました……(汗)。で、ようやく書き上がりましたので、アップさせて頂きます。何となく文章が変わった気がしないでもない……2ヶ月くらいプライベート無かったからなぁ……(滝汗)。少しずつ取り戻してきたいと思います〜。




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