星の子
その4

Web拍手御礼作品







一方。

千尋とソフィーのほうは、すっかり意気投合して二人でお茶の準備をしていたりした。

「ソフィーさぁん、こっちは用意出来たよ〜」

「ありがとう。お茶の準備も出来たし、持っていきましょうか」

ソフィーがお茶を入れたトレイを持ち、千尋がケーキを切り分けたトレイを持つ。

そうやって部屋まで歩いていた二人だったが――――。

「でも、どうして二人はここに来ることが出来たのかしらね」

先に立って歩いていたソフィーが振り返ってそう話しかけて来た。

「何かのきっかけでトンネルが繋がったんだと思うのだけど……」

どうして繋がったのかは分からない。

―――ああ、そういえば自分たちは湯屋へと働きに行く途中だったんだっけ。

トンネルが繋がっていなかったから、というのは言い訳にすぎない。

今頃、いつまでたっても現れない二人に湯婆婆はどれほど怒っているだろう………。

「――千尋さん?」

立ち止まってしまった千尋にソフィーが声をかける。

「あ……う、ううん、何でもない」

訝しげなソフィーに取り繕うように笑いかけ、千尋は慌てて歩き出した。











部屋に入ると雰囲気が一変していた。

主にハクの雰囲気がやわらかいものになっている。

千尋たちがいない間に和解したに違いない。

「ケーキを持ってきたから食べてね」

ソフィーがトレイを机の上に置くと、カルシファーがやかましく言い立てながら彼女の周りを飛び回った。

「おいらのは? おいらのは??」

「あるわよ。そっちのトレイに乗ってるでしょ?」

「わーい」

「きゃ、ま、待って……」

カルシファーが千尋のトレイに乗っかっているケーキの一つにかぶりついて来て、千尋は驚いて声をあげてしまった。

「カルシファー、客人を驚かせてどうする」

ハウルがケーキごとカルシファーを取り上げると机の上に置く。

「うめっ、ソフィーの作ったケーキうめぇ〜〜」

「カルシファー……人の話全然聞いてないね……」

それでもひたすら食べているカルシファーに、そこにいる4人は笑い出してしまった。












「そろそろ帰らなければならないな」

ケーキとお茶をしっかり頂いたところでハクがそう切り出した。

千尋も湯屋の事は気になっていたから、ハクがそう言ってくれた事にほっと胸を撫で下ろした。

まだまだ話はしたいが、仕事をすると契約をしているのだから湯屋の仕事をさぼる訳にはいかない。

そこらの事情はハウルとソフィーにも話してあったから、二人とも残念そうな顔はするものの決して引き留めようとはしなかった。

「また会えるといいんだけど」

「気まぐれであのトンネルが繋がったらまた会えるよ」

そんな事を言いつつ千尋は立ち上がる。

「じゃせめてあのトンネルのところまで送るよ」

ハウルの申し出にハクと千尋は有り難う、と返事を返したのだった。