星の子
その5

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薄暗くなり始めた花畑を歩いていく。

ハウルとハクの二人は無言だったが、ソフィーと千尋はすっかり意気投合し、同い年くらいなのも手伝ってか賑やかに話し続けている。

カルシファーはというとハウルのすぐ近くをふよふよとくっついて来ていた。

「―――驚いたな」

ハウルがそんな事を呟いた為ハクがえ? と問いかける。

「ソフィーはどっちかというと人見知りする方だから、初対面の人とそこまで親しく話す事って滅多にないんだ。一度呪いにかかってから人見知りは良くなった方だって本人は言ってるけど、僕たち以外にあそこまで親しそうに話す姿を見るのって初めてだ」

やや後ろを歩く少女二人を見やる。

まるで親友同士のように楽しそうに話している姿は、今日初めて会ったばかりとは思えない。

「あれは千尋の持っている才能かもしれない」

目の前にあるものをそのまま受け入れて認めてしまう度量の深さは、ハクにはないものだ。

短期間で湯屋の皆に認められ受け入れられたのもひとえに彼女の持つ気質によるもの。

だからこそハクも随分と性格的に丸くなれたのかもしれないが。

「何処にでもいるような普通の女の子にしか見えないんだけどなぁ」

ハウルがそんな事を漏らした時。

カルシファーが「え」と声をあげた。

「カルシファー?」

「なぁハウル。トンネルがあったのはあの山の中腹あたりだろ?」

炎の手を伸ばしてカルシファーが指さす方向を見る。

「そうだよ」

「―――トンネルがない」

「え? それ…どういうこと?」

ハウルの言葉にカルシファーが返事を返すよりも早く、ハクはその場で竜に変化してトンネルがあった場所―――山の中腹へと飛び上がった。

「え、え、ハク? どうしたの!?」

千尋が慌てて声をかけるが、その時には既にハクの姿は山の方だった。












トンネルは跡形もなく消えていた。

人間の姿に戻りトンネルがあった筈の岩壁をそっと撫でて、ハクは呟いた。

「……どういうことだ…?」

あの世界では湯婆婆に真実の名を告げた途端、帰り道が閉ざされて分からなくなった。

それはあの世界の理がそうなっているからで、名を取り戻せば元の世界へと戻れるようになった。

だがハウル達の世界にそんな理が生きているとは思えない。

幾らハウルの力が強大とはいえど、湯婆婆の力とは全く異質なものであるのだし。

「やっぱり消えている?」

背後にハウルが現れて声をかけても、ハクは振り返らずただ頷いただけだった。

「まさかあなたたちを閉じこめてしまうって事じゃないんだろうけど……」

ハウルもこういうケースは初めてで勝手が分からないらしく、首をひねっている。

「……気まぐれでこの世界に来たのではない、ということかもしれない」

「え?」

ハクはハウルに向き直った。

「この世界には、成すべき事があって来た、ということだ」