星の子
その7

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次の日。

「昨日ちょっと調べてみたんだけど」

朝食をとりながらそう切り出したのはハウルだった。

テーブルを囲んで朝食をとっていたソフィーやマルクル、おばあさんに、一緒にどうぞと誘われて席についていたハクと千尋もハウルのほうに視線を向ける。

「恐らく今夜、星が降る」

その言葉を理解出来たのは、おばあさんだけだったらしい。

「ああ、なるほどねぇ……もうそんな時期かい」

ハウルの言葉に同意を示したおばあさんを、マルクルがつついた。

「おばあちゃん、星が降る時期ってのがあるの?」

「そうだよ。前回星が降った時、ハウルはカルちゃんと出会ったんだからねぇ」

かたん、とソフィーがスプーンをおいた。

「あの湖が星の湖と言われるのは、星の子が降ってくる場所だからでもあるんだ」

そういえばハウルは幼い頃星となって降ってきたカルシファーを受け止めて呑み込んだことで、本当ならば死ぬはずだったカルシファーを助けたのだと聞いた。

「それでね、ハク」

ハウルがハクのほうへと身を乗り出してくる。

「あなたに星の子たちを助ける手伝けをして貰いたいんだ」

それまで全く自分には関係ない話だと思っていたハクは、訝しげにハウルを見返す。

「―――私に?」

「そう」

「落ちてくる星の子たちが大地に落ちないように助けてほしいっていうの?」

ソフィーが問いかけると、ハウルは首を横に振った。

「違う。ちゃんと星の子たちが大地に帰れるように、助けてあげてほしいんだ」

「え―――…」

思ってもみなかった言葉に、ソフィーは言葉を失ってしまった。














微妙な雰囲気を打ち破ったのは、他ならぬカルシファーだった。

「おいらたちは空から落ちて来て大地や湖に落ちると死んでしまう。それは知ってるよね」

「ええ…知ってるわ」

「おいらは死にたくなかったから、ハウルが助けてくれるという取引に乗ったんだ。他にも助けられた仲間はいるらしいってのも聞いたことがある」

千尋とハクはただただ顔を見合わせるばかり。

「でもおいらのように人間とうまく共存してる奴はいないんだ。大抵は人間が闇に呑み込まれて契約した人間と共に滅んでしまう」

「カルシファーが言うには、星の子たちは大地に還るべきなんだって。そうしてまた新たな命として生まれ変わってきたほうが幸せだと」

ハウルやカルシファーの言葉には重みがあった。

ソフィーも反論はせず、ただ黙って言葉を聞いていた。

「今日星が降る日だというのは皆知っているはず。力を得ようとする魔法使いたちがやってくるかもしれない」

「その輩たちから守れ、という訳か」

ようやく合点がいったようにハクが頷いた。

「――私が水の眷属であることを知った上での言葉なのだな?」

確認の言葉にハウルは頷いてみせる。

「ハク…」

なんだかハクがとんでもなく大きな責任を背負わされたような気がして、千尋はハクを見つめた。

当の本人は暫く考え込んでいたが――――。

「やってみよう。恐らく私たちがこの世界に呼ばれたのはそのためだ」

そういうが早いか立ち上がった。

「その星の湖を見てくる」

すたすたと歩き出したハクにつられて慌てて千尋も立ち上がる。

「待って。僕もいくから」

ハウルも立ち上がり扉のほうへと歩いていって取っ手をくるりと回した。

チーン、という音と共に円盤が回り、外の景色が一変する。

「これで花畑についた。いくよ」

扉を開ければその向こうは一面の花畑。

「私もいくわ。マルクルとおばあちゃんはご飯を食べてて!」

遅れてソフィーも立ち上がり、先に出ていった3人の後を追っていく。

ぱたん、と扉が閉じられた。

―――後に残されたマルクルとおばあさん、カルシファーは静寂のなか顔を見合わせていた。