ロンド
交錯の回旋曲

その28











クーデターの首謀者である大臣は早々に処分が決まり、祭り上げられてしまった叔父である王弟は、王位継承権を剥奪されて離宮へと謹慎を申しつけられることになった。

聞けばあの紛争の指揮を取っていた将軍は悪魔によって操られていた者らしく、悪魔がいなくなったとたんに自分がどうしてこんな紛争を続けていたのかと首をひねる有様だったらしい。

毒を盛られた国王は処置が早かったため後遺症もなく、2、3日もすれば公務へ戻れるほどに回復をし、国は元の安定を取り戻した。

そうこうするうちにハウル達の国からの使者がやってきて、あっと言う間に停戦の条約が結ばれることになった。

これだけのことがわずか一週間の間にめまぐるしく起こった。







特にあまりにも早い使者の来訪に、眉をひそめたのはハウルだった。

「……サリマン先生がずっと窺ってたんだ。でなきゃこんなに早く手が打てるはずがない」

「そうだとしても戦争が早く終わるのはいいことよ? あたし達も城に帰れるってことじゃない」

「それはそうだけど……」

ハウルは複雑な表情をしている。

「……あの人にとってはやっぱり僕は駒でしかない訳だ」

「…………」

「僕がこの国に来て騒ぎを鎮めるだろうことを、あの人は計算に入れてたんだ」

ハウルの言葉にとてつもなく重い意味を感じ取って、ソフィーは返事を返せなかった。

―――まだサリマンの弟子として修行をしていた頃のハウルは、彼女をどう見ていたんだろう?









ハウル達はクーデター鎮圧の立役者であることと、隣国の人間であるということからなかなか出国の許可が下りず。

ようやく帰ることを許された時には実にこの国にやってきてから一ヶ月という時間がすぎていた。

ということは、カルシファー達と離れてから一ヶ月という時間がすぎたことになる。

「心配してるわねきっと……」

「……愚痴られるのは覚悟しておいたほうがいいだろうな」

城のなかはきっと荒れ放題になっているに違いない。

「……またお掃除しなきゃ」

そう言いつつもソフィーの口元には笑みが浮かんでいた。










この王宮にいる間、自分は何もしなくて良かった。

掃除も食事も洗濯もすべて女官や召使いがやってくれる。

何もしなくていい―――それにソフィーは耐えられそうもなかった。

(やっぱりあたしはあの城で皆の世話をしてるのが一番いいわ)

だから城に帰れるのはとても嬉しかった。












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