Boys are sensitive age
その3






ところかわって現実世界。

「いってきまーーす!」

「千尋、うわばき忘れてるわよ!!」

「いっけない! ありがと、お母さん!!」

慌ただしい朝の風景。

千尋、小学校6年生。

赤いランドセルを背負い、歩き慣れた道をぱたぱたと走るその姿は――――本人としては急いでいるつもりだろうが、決してカモシカのようではない。

良く言って、歩き始めたばかりの頃に猛獣に襲われて必死に逃げる子鹿だろうか。

都会っこらしく、何度も転びそうになりながらも今の目的地――――学校に向かって全力で走っていく。


「く、か、カオナシに、お、おっかけられたときだって、こ、こんなに走らなかったわっ‥‥」

よせばいいのに独り言を言ったりするから、よけいに息が切れる。

チャイムがなるまで後5分。

全力で走って何とかぎりぎり間に合う。

はずだが、50メートル走13秒フラットの千尋の足では、果たして間に合うかかなりあやしい。

しかし走らないよりはマシだろうと、千尋は走る。

走る

走る

走る

だから、目の前に突然白いものが横切った時にも、止まれなかった。

車と千尋は急には止まれない。


「きゃ――――――っっっっっよけてぇぇぇぇぇっ!!!!」






ゴン!







派手な音がして、千尋は止まった。

思い切り顔からぶつかって、ふらふらしたところにランドセルの重みがくわわって、後ろにばったりと倒れる。

「ち、千尋!!!」

慌てたようなその声は―――何処で聞いたっけかな〜〜〜‥‥‥

ああ、ピヨピヨとオオトリ様がわたしを呼んでいる〜〜〜‥‥‥(かなりヤバい)

「千尋! 千尋、しっかりして!!」

がくがくと揺さぶられ、千尋はまわる視点を何とか目の前に合わせた。



そこには

ハクがいた。