Boys are sensitive age
その7





銭婆手ずからいれてくれたお茶を飲みながら。

「えええーっ。じ、じゃあ、私を呼ぶためだけに、こんな事を?」

「ああ、そうだよ。色々、千尋にも見て貰いたいものもあったしね」

今は隣の部屋いっぱいに押し込められているものにちらりと視線を向け、銭婆は笑った。

式神に印を盗ませ、手紙を出したのも、全部千尋を呼ぶため。

千尋にしてみれば、もう二度と会えないかと思っていた人たちに会えたのだから嬉しいことこの上ないが。

ティカップをもったまま頭を抑えているのはハクその人である。

「‥‥‥それは良いのですが、こちらの事情とか都合とかも考えて頂きたいのですが‥‥湯婆婆様をなだめるのにどのくらいの労力がいるか、ご存じでしょうに」

「何を言ってるんだい。千尋に会えて嬉しい〜〜〜という顔じゃ説得力はないねぇ」

そのとたん、いつもは無表情と言われるハクの顔がいきなり赤くなった。

隣で千尋もつられて赤くなっている(どうやらシンクロしているらしい)。

それを面白くなさそうに見ていたカオナシが「ぁー」と言いながら千尋の服を引っ張った。

「え? なに?」

どうやら隣の部屋に来いと言っているらしい。

千尋はいすから立ち上がった。

「こっちのお部屋に行けばいいの?」

つられてハクも行こうとして、銭婆に止められた。

「あんたにはちょっとして貰いたい事があるんだよ。こっちにおいで」

「しかし!」

「すぐ終わるよ。ちょっとおいで」

銭婆に押し出されるように、ハクは家の外につれていかれてしまい

部屋の中には千尋とカオナシだけが残った。

「‥‥どうしたんだろうね、銭婆とハク。なんか様子変だったけど」

「‥‥ぁー」

カオナシが喋れないのはもとより承知。

千尋は1人首をひねっていたが、すぐに考えるのをあきらめて(もうちょっと粘ればテストでもいい点がとれるだろうに)、カオナシが誘う部屋の扉をあけた。








―――全く、私が何でこんな事を。

竜になったハクは喋る事が出来ない分、心の中でぶつぶつと文句を言っていた。

迎えに行ったまでは良かったが、それからがどうも空回りしている。

千尋と一緒の時間は確かに長いがそれに内容が見合ってない。

今も、千尋を置いてこうして「急の手紙」なるものを少し離れた家まで届けるために、空を飛ぶ羽目になってしまっている。

本当ならばすぱっと断りたいところだが、銭婆には大きな借りがあるためにそれも出来ない。

「ああ、ご苦労さん。やっぱり空を飛べる者がいるといいねぇ」

戻ってきたハクを銭婆が待ってくれていた。

竜となればかなりのスピードで飛べるとしても、あれから2時間はたっている。

千尋はさぞや退屈していることだろう。

「これきりですよ。私はお手伝いをするために来てるのではないんですから」

竜から人の姿に戻ったハクは何度も銭婆にクギを刺すと、急ぎ足で銭婆の家へと向かった。