ミエナイココロ










木々が作ってくれた寝床はふわふわしていて温かく、冷えた千尋を温めるのに最適な場所だった。

とりあえず千尋の体温を回復させるためにハクがつきっきりで温めたおかげか、千尋の様子はさきほどよりは良くなってきていた。

息も先ほどよりも安定してきている。まだ時々苦しそうに息を紡いでいるが。

ハクは千尋の髪を撫でた。

まだ熱がある事を示すように、額はじんわりと熱を帯びている。


早く

早く目を開けてほしい

知りたいこと

知ってほしいこと

言葉で告げるのがもどかしいほどのたくさんのことを共有したい



千尋のすべてが知りたい

千尋が何を思っているのか

何を感じているのか

何を見つめているのか




――――早く、声が聞きたい






「――――‥‥」

千尋が、何かを呟いた。

「千尋?」

うっすらとあけられる瞳。

熱で潤んでいる瞳は、何も映していない。

目の前にいるハクすらも。

焦りが衝動を生み、その衝動がハクを突き動かす。

「千尋‥‥私だ。私を見て。千尋」

声に反応するように千尋が視線を動かす。

「‥‥‥ハク‥?」

千尋の視点が、はっきりとハクをとらえた。

「‥‥ハク‥‥わたし‥‥? わたしどうしちゃったんだろ‥‥」

全身の力が抜けた。

かすれた声ではあったが、きちんとした反応が返ってきた。

「‥‥よかった‥‥」

ハクは千尋に覆い被さるように倒れ込んだ。

「ハク‥‥? だ、だいじょうぶ‥‥?」

その言葉に千尋のすぐ耳元で答えが返ってきた。

「大丈夫‥‥‥安心しただけだから」



自分のような神ではなく

もっと大きな存在がいるのならば

その存在に感謝したい


ハクはそんな気持ちで千尋を抱きしめていた。